「だけど、こいつらのせいで仕事が増えたじゃん。
人間の記憶を変えて回ってたとき、おまえが環玄(わつね)と一緒に愚痴ってたのは知ってるぞ。
それに、あの琴っていうお姫さまだか何だか知らないけど、あいつをあんたに会わせるのだって大変だったからね。
なんの力もない、しかも霊感もちの人間にすら気づかれないようなひ弱な霊魂を、おれたちがつくり出した場に呼ぶのって簡単にできることじゃないんだよ。
というかそもそも、一度死んだ魂を生きている者に会わせること自体普通だったら絶対にないんだからさ、当然のことをされたなんてくれぐれも思うんじゃねえぞ」
「確かに、特におまえたちには一度渡りかけた舟を此岸へ引き戻してもらったからな。
おれのわがままで苦労をかけたな、珒砂、轉伏」
「だ、だって、悍染さんに頼まれたらやるしかないだろう?」
「そうですよー、命令だったら陽㬢(ひさぎ)たちに押し付けてたけど、悍染さん個人の頼み事だったら断れませんからね。
断るようなやつがいたら斬り落としちゃうかなあ」
突然労われ、珒砂がややむくれた口調になって横を向く。
反対に明るい声で同意した轉伏は、その口調のまま物騒なことを言った。
玖皎は瞬きをして、阿毘たちの頭を撫でる悍染を見つめた。
「……おまえが?」
「千年間ずっと監視してきた霊魂と妖怪だからな、閻魔王も目をつぶってくれたよ。
まあおまえはともかく、あの姫が力を欲して道を踏み外していたらこんなことはしなかったぞ。
悪霊堕ちしなかった元主人に感謝するんだな」
「そうか……」



