「そうだったか。
それで、その鬼神さまがおれのような妖怪の端くれに何の用だ。
鬼神は冥府にいるものだと聞くぞ」
「なあに、千年前から見張り続けてきたやつだからな。
おれが直接見ていなかったこの三百年の間にどう変化したのか、確認しに来ただけさ。
おまえのことは珒砂たちから報告を受けてはいるが、自分の目で見てみるのも悪くないだろう」
玖皎は小さく笑うと立ち上がった。
にわかに真面目な顔つきになって案摩の面を見据える。
「……色々と裏で手を回してくれていたようだな、礼を言う」
「まあったくだよ、あんたのようなはた迷惑な妖怪のおかげで、おれらがどれだけ苦労したか。
あのチビの仲間を叩き起こしたり、この町の人間の記憶を変えたり、おまえの波動やあの付喪神の波動の影響が人間どもに出ないようにしたり……本当に骨が折れる仕事だったよ。
これでお礼の一つもなかったら、ちょんぎっていたところだね」
珒砂が恩着せがましく自分がやってきた仕事を並べる。
すると轉伏がその頭を軽く叩いた。
「ばか、それがぼくたちの本来の仕事だから、文句を言うのは筋違いだろ」



