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思葉が学校に行ってからも、玖皎はその場を動かないでいた。
壁にもたれ、目を閉じて座っている。
朝の通勤ラッシュで表通りに絶え間なくエンジン音が走りすぎていったが、やがてその波も収まった。
それでも玖皎は座ったまま。
まるで眠っているような様子だ。
車の音が、また一つ店の前を通ろうとする。
だが、その音は不自然なところでぶつりと途切れた。
玖皎はほぼ同時に目を開く。
刹那、彼以外誰もいない部屋に、2人の少年の姿が浮き上がった。
どちらも打刀を佩いており、片方は怒り顔の青い鬼の面を、もう一方は笑い顔の赤い鬼の面をつけていた。
地獄の閻魔王に仕える阿毘だ。
怒り面の阿毘から、突き刺すような殺気が放たれている。
しかし玖皎は特に驚いた様子も気にする素振りもなく、突如現れた二人に視線を送る。
それから、ふ、と口元をゆるめて彼らの隣の空間へ目線をずらした。
「ほう、悍染(あらそめ)のやつ、部下に押し付けるつもりか。
おれも嘗められたものだな」
「おいあんた、おれたちを見下してんじゃねえよ」
怒り面の阿毘が面通りの声音を発した。
口調と高さから少年のものだろうと分かる。
それを笑い顔の面の阿毘がなだめた。
こちらの穏やかな声も少年のそれと同じである。



