妖刀奇譚






「ねえ、変態って、何の話?」


「やだ、思葉ちゃん、忘れちゃったの?」



実央が目を丸くして思葉を見た。



「スカート切り魔のことだよ、夜にスカート履いて歩いている女の人のスカートを切って逃げるやつのこと。


先週だって先生から不審者情報の連絡受けたでしょ?」


「え……あ、そ、そうだったね」


「まあ、思葉ちゃんは制服以外でスカート履かないからあまり心配ないもんね、忘れちゃってもしょうがないよ」



やんわりと笑って綾乃が思葉の肩を叩く。


あいまいに微笑み返したが、頭の中はパニックだった。



(ど、どういうこと?


なんで髪切り魔がスカート切り魔に変わってるの?


単なるあたしの思い込み……いや、それは絶対にない。


でも、どうしてみんな、髪切り魔のことをスカート切り魔って認識しているんだろう。


それに、犯人が捕まったなんて絶対にありえないのに……)



「ほらおまえら、とっとと教室へ行けー、遅刻扱いにするぞー」



廊下を通りながら生徒指導の体育教師が太い声を響かせる。


昇降口に居る生徒たちは、談笑を続けながらもあわただしく階段へ向かった。



「いっけね、駄弁りすぎた」



來世たちも走り出す。


だが、思葉だけは動けずその場に立ち尽くしていた。


状況が呑み込めない。


思考回路が追い付かないで混乱する。



「どう、なってるの……?」



誰もいなくなった昇降口に、思葉の独り言が虚しく落ちた。