妖刀奇譚


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月曜日の朝。


思葉は身支度を整え、あとはコートを着るだけの状態でいたが、なかなか部屋を出ようとしなかった。


無意味に室内をぐるぐる歩き回る。



「早く行かないと遅刻するぞ?」



太刀掛けの隣に胡座をかいている玖皎が見かねたように声をかける。


思葉は足を止め、困った表情で頭を掻いた。


リップクリームを塗った唇をへの字に曲げる。



「分かってるよ……だけど、來世と綾乃さんに会うのがちょっと心配で」


「ああ、あの晩に眠らせたおまえの友人のことか。


何が心配なんだ?」


「きまってるでしょ、二人に顔を見られたかもしれないことよ。


顔は見られてなくても、あんたを振り回してたところ見られてたらそれだけでもアウトだし……あああ、どうしよう」



思葉は唸って頭を抱える。


玖皎がやれやれと髪をかきあげて片足を立てた。



「そう案じなくとも大丈夫だ、おまえが心配しているような事態にはなっていない」


「へ?なんでそう言い切れるのよ?」


「そういう事態になってはおまえ以上に困る連中がいるからな。


あいつらが何もせずにじっとしているとは思わん。


ま、要するに連中に押し付けたということになるがな」