妖刀奇譚






「檆葉丸(すぎのはまる)」


「え?すぎ?」


「檆葉丸、おれのもう一つの名だ。


姫から与えられ、おれが真(まこと)のものとした名だ。


おれにとって、『霧雨玖皎』は仮のものに過ぎん。


……思葉。おまえに、こちらの名でおれを呼ぶことを許す。


おれの主である証だ」


「檆葉丸……」



そういえば、観せられた記憶の途中で琴が玖皎に名前をあげようとしていた場面があった。


この名は、そのときに玖皎へあげたのだろうか。


もう一度、今度は胸の内で呟いてみる。



「『霧雨玖皎』もそうだけど、こっちもけっこう恰好いい名前だね」


「姫は名付けがうまかったからな」



玖皎が琴と同じ科白を言う。


思葉は小さく吹き出した。


それだけで、なんだか肺のあたりが楽になったような気がした。



「ありがとう……そんな大切な名前を教えてくれて。


でも、玖皎の本当の名前なら、普段は呼ばないようにしておくね。


ものすごく大事なときにだけ……特別なときにだけ、その名前を呼ばせてね」


「ああ、それでも構わない」