妖刀奇譚






「今、おまえの元に居るのはほとんど成り行きだ。


だがこれからは、おれの意思で、本当の意味でおまえに仕えたい。


……おれに、おまえを護る役目を与えてはくれまいか?」



思葉は言葉をなくして相手を見つめた。


まっすぐに自分を見ている双眸は、月明かりを弾く太刀と同じ光を宿している。


また泣きそうになってしまう。


震える息を吸って、思葉は自分の膝頭に視線を落とした。



「……さっき、玖皎が琴さんと話しているのを観ててね」


「うん?」


「あたし、あのまま玖皎が、どこかへ行っちゃうような気がしたの。


あたしなんかの手が届かないような、ずっと遠くへ行っちゃうんじゃないのかって思った。


玖皎と琴さんが会えて良かったって思ったけど……それが、怖かった」



思葉は玖皎の手甲に手を重ねる。


玖皎の手は大きくて、自分の手の小ささが際立って見えた。



「でも玖皎は、このままあたしの傍にいたいと思ってくれたんだね。


どこにも行かないで、ここに居てくれるんだね。


……ありがとう、すごく嬉しいよ。


妖怪退治とかはできない頼りない主人だけど、お願いね、玖皎」



なんだか照れくさくなって、思葉は少しだけおどけた。


対する玖皎は真剣な表情のまま、低くした声で囁くように言った。