妖刀奇譚






――チリン。



鈴が鳴る。


清らかな音色を響かせる。


瞬きすると、景色は思葉の部屋に戻っていた。


月はない、桜の花弁も観えない。


玖皎はドアの前に立っていた。


座り込んだまま、思葉はその背中をぼんやり見つめる。


ふと左手に目をやると、そこには色あせた髪紐に結ばれた鈴があった。


錆びついて変色し、形も歪になっている。


髪紐は途中でぶつりと千切れていた。



(この鈴って、琴さんの……?)



玖皎の方を向くと、彼も同じように自分の手のひらを見ていた。


暗くてよく分からないが、恐らく彼の手に鈴の片割れがあるのだろう。


思葉は鈴を握り、玖皎を呼ぼうと息を吸った。


すると突然、胸のあたりが熱くなった。


それが喉の奥へ、顔へ、目頭へこみ上げてくる。


あっという間に両目から涙が溢れ、頬を滑る。


勢いが強く、顎まで伝わずに膝へ滴った雫もあった。


思葉はあわてて鈴を膝に置き、両手を顔に当てる。


唇を噛んで留めようとしたが、涙はぼろぼろ溢れるばかりだった。


息が震え、嗚咽が漏れる。