妖刀奇譚






「残るって……まさか、今までずっと?」


「さよう」



思葉はまた驚かされた。


千年前から現世に留まっている霊魂など聞いたこともない。


姿を維持し続けているのが不思議なくらいだ。



「されど、わらわの魂はかなり弱い波動らしくてな。


相性が良いか、余程鋭い術師でなければ感じとられなかったのだ。


だからそなたはともかく玖皎にも気づかれなかったのじゃ。


肉体がないのは便利であるぞ、どこへでも行くことができるからな、玖皎に付いて行くことなど訳なかったわ」



琴が真っ白な両手を少し上げてみせる。


あまりにも次元の異なる話で、思葉は彼女の言を飲み込むので精いっぱいだった。


まだ身内でその方面に明るい人がいるから、理解の余裕はあるが。



「移ろう時代の中で、わらわは玖皎を見守り続けた。


あの子は、事情を知らぬ者たちにとってはただの刀と変わらぬ。


仕方ないとはいえ、戦場に連れて行かれ人を斬らされているのは、見ていて心が痛かった。


玖皎の力は、妖怪と闘ってこそ輝くものだというのに」



ふいと横を向き、琴が不機嫌そうに頬を膨らませる。


千年前に生きていたお姫さまだと身構えていたが、口調や雰囲気が違うだけで普通の女の子と大差ないようだった。



「……あたしも、そう思うよ。


さっき、正気を失っていた櫛の付喪神と闘っているのを観ていたけど、とても強かった。


陰陽師や祓魔師や祈祷師のところに渡っていれば、もっと活躍できたんだろうね」