「この女(あま)、がきのくせにおどかしやがって」
男の声が頭上から降ってくる。
琴は渡殿に倒れこんでいた。
床につけている左肩から右のわき腹にかけて、焼けつくような熱い痛みを感じる。
痛すぎてうめき声すらあげられなかった。
こびりついた垢と泥が目立つ二本の足が目の前にある。
「ほう、すごい切れ味だ。
これは上等の得物だな、へへっ、いい拾い物をした。
まあ……斬るのは少し楽しんでからにすれば良かったか、惜しいことをしちまった。
生娘らしそうだったが、まあいい、この短刀をいただいて行くか」
右手から、短刀が抜き取られたのを感じる。
琴は抵抗しなかった。
抵抗できなかったのだ。
「ここにはまだまだ、いい女がいそうだな、楽しむのはそっちにするか」
薄汚れた足が視界から消え、乱暴な足音と共に声が遠ざかっていく。
(待って……どこへ行く。
玖皎を、玖皎を返して……それはわらわの刀ぞ……)



