「ほらほら、お嬢ちゃん、怖がらなくていいんだ。
おれとたっぷり楽しもうぜ、たあっぷりと。
どうせほかのやつらも来るだろうからよ、それまで二人きりでな、へへっ」
野卑そのものの笑みで男が一歩にじりよる。
琴はきっと男を睨みつけ、半身引きながら懐に手を差し込んだ、
そこには一本の短刀がある。
贈り物の山から見つけ、そっと胸に忍ばせておいたのだ。
刀というつながりで、玖皎の代わりと手にしていた。
「――おのれ、よくも玖皎を」
「あ?」
「汚い手で玖皎に触るな、玖皎を返せ!
それはわらわの護り刀じゃ!」
激昂した琴は短刀を抜き払い、男にとびかかった。
先ほどの走り方からは想像もつかないくらい俊敏な動きだった。
しかし、それでも非力なのは変わらない。
男が驚きつつも的確に判断して後方へ飛び、玖皎の柄に手をかけたのが見えた。
鯉口が切られる。
けれど琴の動きは止まらない。
(――やめてっ!!)
思葉が叫んだと同時に、男の手元から鋭い光が一閃した。
琴の視界いっぱいに、てらてらとした液体が迸った。



