琴が離れかけた衣擦れの音に声をかけた。
音はすぐに止まる。
「如何なさいましたか、姫さま」
「いや、大したことではない。
が……あちらの部屋に集った皆は、わらわのことを祝っておるのだな?」
「まあ、何を仰いまするか、当然でございますよ。
わざわざこのような山中の寺へ、姫さまの着裳をお祝いするために来てくださった方々ばかりです」
「そうか……いや、すまぬな。つまらぬことを聞いた」
再び衣を引きずる音が起こり、遠ざかっていく。
その音がにぎやかな笑い声に溶け入ってから、琴はため息をついた。
贈り物へ視線を投げたがすぐに外す。
鮮やかな色彩の絵が施された貝を手に取り、また息を吐き出してそれを離す。
貝が畳に落ちたはずみで、人形がことりと転がった。
「わらわのために、わらわを祝って……貴族はこうも嘘つきばかりがそろっているのか。
皆、わらわを祝ってなどいない。
わらわを理由にして、自分がめいっぱい楽しむことしか考えておらぬ。
贈り物や豪華な膳でわらわをごまかそうとしておる……」
また笑い声が大きくなる。
愉快な調子で楽器が奏でられ、それに合わせて男たちの野太い歌声が踊り始める。
琴は桜色の袿姿の人形を抱えて寝転んだ。
御簾によって四角く切り取られた天井をぼんやり見つめる。



