琴は何人もの侍女たちに囲まれ、一段高い畳の上に立っていた。
剃髪で袈裟を身につけた、住職らしき姿もある。
琴は女たちによって豪奢な着物を着せられていた。
歯に筆が触れ、顔には化粧が施される。
室内には優雅で厳かな雰囲気が漂っていた。
(……これは……着裳の儀式だ)
とうとう、この夜が来てしまった。
事の顛末は知っている。
だが、それを実際に目にするとなると怖い。
(現実と混同しては駄目、これはもう既に起こったことだから……
あたしがどう思おうと、そうであってほしくないと願っても、覆せないものだから……)
この日、琴は宴の席から離れた部屋の、御簾に囲まれた畳の中にいた。
童女や侍女が食事を運んできたが、それ以外に彼女をおとなう者はいない。
賑やかな声を聞く琴の胸に、悲しげな感情が広がっているのを感じた。
「寿々咲(すずさき)姫さま、こちらは三条弼柾どのからの贈り物でございます」
「ありがとう、夏梅」
御簾の向こう側からの声に、琴は静かに答えた。
どうやら、寿々咲というのが彼女の新しい名前らしい。
目の前に掛けられた薄布が少しだけめくれ、その隙間から贈り物の品が置かれた。
「……のう、夏梅」



