大げさに身をすくめて、琴は小さく笑った。
こうして大きく口を開けて笑うことも出来なくなるのかと、彼女が頭の隅で考えたのが伝わった。
思葉はその寂しさを自分のことのように感じた。
臍の下あたりに手を当てて、琴は先日おぼえた鈍い痛みを思い出した。
大人になった証拠だと那蘭たちは大喜びし、その日の夕食は正月のように豪華だった。
「……皆、わらわが大人になったと喜んでおったな。
でも、本当に心から喜んでくれたのだろうか」
一瞬、玖皎の周りの空気がわずかに変わったように観えた。
しかしそれは思葉だけが感じたようで、琴の気付きではなかった。
「那蘭たちは隠しているようだが、わらわもばかではない。
……教えられずとも分かるのだ、赤子であったわらわをこの山寺に預けた父母は、とても高いところにいらっしゃるのだと。
ここに預けられたのは、どちらかにとって、あるいはお二人にとってわらわが邪魔な存在だからなのだ。
そうでなければ血の繋がる赤子をそう簡単に手放せようか。
……ここに暮らす女たちは、わらわのせいで都から連れ出されたのだろう。
わらわさえいなければ、皆、こんな山の中に縛られることなどなかったのだ。
那蘭はわらわのような赤子に乳を飲ませたくなかったかもしれぬ。
大人になったことを喜んでくれたのも、わらわを嬉しく思わせてくれるための嘘だったのかもしれぬ……」



