妖刀奇譚









場面が移り変わる。


女性らしくすらりとしたものに成長した白い指が、箏の弦を弾いていた。


どこかで耳にしたことのあるような曲だ。


箏曲の経験はないが、かなりの腕だということは何となく伝わってくる。


最後の弦の余韻がなくなると、傍に座っていた羽木が拍手を送った。



「素晴らしいです、姫さま。


こんなにも流れるようにお弾きになる方はそういらっしゃいません」


「褒めても何も出ぬぞ、羽木」



琴は首を竦めたが、まんざらでもないように言った。


どうやら音楽の稽古をしている最中らしい。


平安時代、高貴な身分の姫はいい歌が詠めることと、美しい字を書くこと、そして楽器を上手に演奏できることが特に求められていた。


羽木が部屋を去ってからも、琴は箏の練習を続けていた。


部屋の一角には刀掛けがあり、そこに玖皎が置かれている。


彼の言っていた通り、琴は玖皎を日中傍にいさせるようにしていたらしい。


あれほど姫が刀に近づくことを嫌がっていた羽木が黙認していたのだ。