贋作という言葉に長谷部が残念そうな響きがこもった声で驚いた。
心外だと感じている風にも見えなくないが、思葉にはなんだか芝居がかって映る。
「こちらはれっきとした本物ですよ。
疑われてしまうのは無理もありませんが、それは間違いないので安心してください。
あ、今鑑定書の方をお見せ」
「結構です。思葉に見てもらうんで」
「は?」
鞄からファイルを取り出そうとした長谷部が顔を上げる。
それから訝しげに思葉に視線を投げた。
來世は白い歯をみせて長谷部に笑いかける。
「思葉の家、骨董品屋なんです。
だからこういう画とか怪しい壷とかの見極めはこいつに任せてるんですよ」
「は、はあ、そうなんですか。
お嬢さん、お若いのにすごいですねえ」
「どうも」
長谷部の愛想笑いを無視して、思葉は畳に広げられた掛け軸を見つめた。
そこに込められているものに意識を集中する。
だが、いくら目を凝らしても何も見えてこなかった。
ちらとも感じるものがないのだ。
狩野元信の名前は父親の正信と併せて知っていたし、当時からの評判について永近に少し教えてもらったことがある。



