寺の鐘が鳴る。
いつの間にか空には黄丹色が混ざり始めていた。
もうすぐ日が暮れ、夜になり、妖怪たちが蠢き始める。
「では、わたしはこれにて」
「ま、待って」
軽く頭を下げた道臣を、琴があわてて止めた。
きょとんとする彼の手から玖皎を取る。
羽木が血相を変え、夏梅が小さく悲鳴を上げたが、琴は玖皎の鍔のあたりを見つめて言った。
「霧雨玖皎、わらわはそなたの声を聴くことも姿を観ることもできぬ。
だが、頼りにしておるぞ。
道臣もだけれど、そなたもとても心強いわらわの護りじゃ。
わらわの目には観えぬ悪いものから、わらわを護ってほしい」
手の中の太刀は静かにしていた。
琴に自分のような力がないので当然であるが、思葉は少しだけ違和感をおぼえた。
返答が聴こえなくても、琴が満足そうにしているのが何となく分かった。



