程なくして、一振りの太刀を片手に道臣が部屋に戻った。
「こちらが晴明どののかつての式、霧雨玖皎です。
どうぞ、ご覧ください」
道臣は苑珠が用意した刀掛けに太刀を横たえさせる。
見るだけで触ってはいけないと約束させられたのに素直に従い、琴は道臣の向かい側から玖皎を見つめた。
当たり前ではあるが、玖皎の拵えは思葉の手元にあるものとはずいぶんと違っていた。
戦に持ち運ぶというより、貴族に献上するための鮮やかな装飾が施されている。
「……本当に、この刀には魂が宿っておるのか?」
「はい、姫さま方のお耳には聞こえぬかと思いますが、玖皎は姫さまにお会いできて光栄だと申しております」
「そうか……霧雨、玖皎というのだな。
喋ると言ったが、こやつに口や目はあるの?
見当たらないようだけど」
「それはわたしにも分かりかねますが、わたしたちと同じように見聞きすることはできるようです。
拵えに包まれているというのに、まったく不思議なものですな」
琴はぱちぱち瞬きして道臣を見上げた。
「包まれている?これ自体が玖皎ではないのか」
「姫さまが今ご覧になっているのは、刀にとっての衣服でございます。
刀の身体は、この鞘や柄に包まれているのですよ」
後ろから苑珠の声が聞こえた。



