琴もまた、思葉が抱いていたイメージとはかなりずれたお姫さまだった。
子ども所以とでも言うべきだろうか、少しわがままが強い。
自分の感情に素直な少女だった。
「まあまあ、お二方、そのようないじわるを仰らずとも。
姫さまがご覧になりたいと仰るのであれば、お見せしてもよろしいのではないですか?」
ふいに衝立の向こう側から、葡萄染(えびぞめ)の小袿姿の侍女が現れた。
2人よりも若々しい髪が背に流れている。
琴はその侍女のもとへ駆けよると、嬉しそうに彼女の手を取った。
「苑珠(えんじゅ)、苑珠はわらわの味方をしてくれるか?
わらわは道臣の刀が見たいの、だけど羽木(はぎ)と夏梅(なつめ)がそれを許してくれないのじゃ」
「姫さま、わがままを仰らないでください。
苑珠どのも、いくら姫さまがお望みになられても危のうございます」
夏梅と呼ばれた花田襲の侍女が顔をしかめる。
羽木も怒った顔をしていたが、苑珠はにこやかな顔を崩さずに言った。
「ですが、その刀の妖怪は道臣どのが従えられているのでしょう、それなら危険などありませんよ。
それに、どうして晴明どのから遣わされた式が、お守りすべき姫さまを襲うようなことがありましょうか」
苑珠が視線を向けると、道臣が微笑んで頷いた。
夏梅と羽木は顔を見合わせたが、琴にねだられてとうとう折れることになった。



