自分で自分を引っぱたきたくなる。
いや、今反省する暇はない。
「まったく、もう足掻いても無駄だというのに、往生際の悪いやつだ」
玖皎がため息をつき、大股で付喪神に追いつく。
首のあたりに向けられた刃がギラりと輝いた。
「同族を散逸させるのは心ぐしく思うが仕方ない。
せめて、これ以上苦しまぬよう一撃で」
「待って、玖皎!」
太刀を振り上げようとした玖皎に手のひらを向けながら、思葉は杉の木の下から駆け出した。
まだ動きを止めない付喪神の前に片膝をつく。
そして迷いなく両腕を伸ばし、今にも冬の冷気に融け消えそうな身体を抱きしめた。
玖皎が仰天して目を剥く。
「お、おい思葉、何をして……」
「目を覚まして!」
思葉は辛うじて実体を保っている付喪神を抱き竦めながら叫んだ。
しかしもう言葉が通じないのか、付喪神の声が恨みがましく低くなる。
木の棒同然になった手が、思葉の髪を奪おうと背中に伸びる。
「自分を思い出して!あなたは誰も怨んでいないのよ!」
玖皎が顔を険しくして太刀を握る手に力をこめたとき、思葉はもう一度、先程よりも力を込めて叫んだ。



