自分に護身をかけたことが、完全に頭から抜け落ちていた。
意識が薄れれば護身の力は弱まってしまう。
太い杉の木のそばに降ろされ、思葉は唱えた被甲護身をイメージした。
自分には鎧がある、観るべきものを観るために、聴くべきものを聴くために、まやかしを祓う護りがある。
これまでは剣道で用いる防具をイメージの手がかりとしていたが、今の思葉にとって被甲護身は一振りの太刀だった。
薄く鋼のように硬い膜が張られたような感覚がする。
目を開けると、護身で邪魔なものが取り除かれたからかさっきよりも暗闇が見えやすくなっていた。
玖皎が付喪神と激しくぶつかり合っているのが観える。
思葉は幹に手を当てて、憤怒の形相で玖皎を仕留めようとする付喪神を凝視した。
付喪神を探し出そうと決めた理由は被害者を出さないためというのもあるが、主軸は付喪神の怨恨の念を少しでも晴らすためであった。
今までも大きな負の思念が残っている品にはそうしてきた。
幽世(かくりよ)へ渡るときまで、この世への恨みを抱えていて欲しくない。
(あの付喪神が女の人の髪に恨みを持っているのは、過去に恋人に裏切られたことが原因……。
じゃあ、どうしたらその気持ちから解放されるんだろう。
今まで観てきた記憶に、何かヒントがあれば……)



