「オオオオオオッ!」
突然、付喪神が怒気を鋭く放った。
纏っている妖気の光りが強まる。
彼女の身体から髪が伸び、それは真っ直ぐに無防備な思葉へと向かった。
「きゃっ!」
思葉は半ば転がるようにして直撃を免れる。
しかし、もう一房伸びていることに気付くことができず、胸のあたりに絡みつかれた。
悪寒が走り、外そうと咄嗟に手をかける。
そのとき目の前の景色が変わり、古い箪笥と鏡台と卓袱台のある荒れた薄暗い部屋が観えた。
手鏡を握りしめた、乱れた長い髪をそのままにした女がうずくまって泣いている。
彼女の手元からこの景色を見ているようだった。
涙と苦しみと恨みのこもった声が聴こえる。
――ああ、怨めしい……
――信じていたのに、心の底から信じていたのに、裏切るだなんて。
――醜いわたしをあんなにも好きと言ってくれたのに、わたしのような髪を持つ女がいいと言ってくれたのに、その舌の根の乾かぬうちにこんな仕打ちをするなんて。
――赦せない。
――いいえ、赦せないのはあの人じゃない、あの人を惑わせた女……そいつが憎い。



