妖刀奇譚






実際、誘いに乗った付喪神が槍のごとく髪を伸ばす。


しかしそれらは何もない地面に突き刺さり、跳躍して避けた玖皎は気合を発して、別の髪の房を斬り落とした。


妖気を集結させ凝固していない髪は呆気なくちぎれる。



「アァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!」



付喪神が憤怒の叫びをあげて玖皎を捕まえようと髪を操る。


闘いにおいて余裕を失い冷静さを欠くことは隙をつくることにしかならない。


そして、勝負はその隙によって大きく左右される。


玖皎はその隙を見逃さず、懐に飛び込んだり背後に回ったりして、確実に付喪神の髪を削ぎ落としていく。


その度に付喪神は苦しそうな呻き声を漏らし、妖気の光が瞬いた。


玖皎の動きに無駄はまったくない。


それに合わせて水干の裾が翻り、まるで剣舞を舞っているかのように錯覚させる。


戦場に連れられ剣豪たちの手を渡り続け、その身に闘いの記憶が刻み込まれているからだろう。


あっという間に形成は逆転し、こちらがかなり優勢になっていた。



(す、ごい……)



思葉はぺたんと座り込みながら、玖皎の立ち回りを観ていた。


魅入っていると言っても過言ではない。


玖皎の姿は生命力に溢れ、それが仮初のものであると分かっていても俄に信じ難かった。


安倍晴明はこの姿を見抜いて、彼を散逸させず式として手元に置いたのだろうか。