妖刀奇譚






――ガキィンッ!!



硬いもの同士がぶつかる痛々しい音が響いた。


けれど、身体に痛みは増えていない。


そのうえ、いつの間にか手から太刀がなくなっていた。



(え?)



思葉はぱっと目を開ける。


自分と付喪神との間に、月明かりを浴びる青年の姿があった。


月白色の長い髪、群青色の水干。



「ぐっ……ぅうう……」



付喪神はいつの間にか後方へ下がり、苦しそうに呻いている。


こちらに背を向けたまま、青年は太刀を構えた。


風に流れる髪を見つめて思葉はほっと表情を和らげる。



(まったく、こんな恰好いいタイミングで……)



「なるのが遅いよ、玖皎」


「すまん、だが間に合ったな。


おまえはそこで休んでいろ、あとはおれが片づける」



本体をくるりと回し、玖皎は地面を蹴った。


勢いで枯れ草が舞う。


それが再び地面に横たわる前に、刃が空を切る音が聞こえた。


続いて金のぶつかる音が散る。


月光が降っており、前に店内で見たときよりも戦いの様子がよく分かる。


玖皎は相手の周囲を動き回って翻弄させ、攻撃を誘い出している様だった。