「お、おい、どうした急に」
「ちょっと、気持ち悪い……なにこれ、ぐるぐるする。
なんか、心臓がいくつも分かれているみたい……」
「くそっ、この状況で限界が来たか。
おまえはこういうことに慣れない人間だから、身体への負担が大きくならんよう波動は調整したつもりだったが、長丁場が悪かったな。
やっぱり、一度引くぞ。
これ以上消耗したら、付喪神に攻撃されなくても倒れるぞ」
うっすら開けた目で前方を見ると、付喪神はゆらゆら揺れながらゆっくりとこちらに向かっていた。
髪は毒蛇のようにくねり、その隙間からのぞく妖しげな光を宿す双眸、まるでゴルゴン三姉妹のよう。
しかし思葉は、その姿にゴルゴン三姉妹ではなく、大鎌を持った死神を連想した。
玖皎の言う通り、ここはひとまず退却すべきだろう。
けれども身体が鉛のように重く動かせない。
自分を奮い起こそうと何度も深呼吸をするが、効果はまったくと言っていいほどなさそうだった。
「ふふ……髪、髪、わたしより奇麗な髪……うふふふふ。
これで、もう見なくてすむ……わたしの髪、もっと奇麗になる……あははははは」



