しかし、それはまるで鋼鉄のように硬くなった何房もの髪に阻まれる。
その向こうで付喪神がにいっと口の端を吊り上げ、別の髪を勢いよく伸ばした。
先に反応した玖皎が身体を操ってくれたので直撃は免れたが、刃で受け横に往なした感触もやはり鋼にぶつかったものだった。
「え、ちょっと、何今の?」
「妖気を固めて盾のようにしているんだ、こちらが刀だから同じような武器としても扱っている。
髪は霊力の源だから尚更、そういう使い方がしやすい。
やつの隙をついて、妖気を固める前に斬り裂くしか方法はないな」
「マジで?あたしこれ以上速く動ける自信ないよ……」
「泣き言を言うな、五日前の意気込みはどこへ行ったんだ」
「それとこれとは別だよ!」
5日前の自分は、こんな展開になるとは欠片も思っていなかった。
しかし、こうなっては闘う以外に選択肢はない。
思葉は逃げ出したい衝動に駆られるのを抑え込み、太刀を構えて付喪神と対峙した。
付喪神が針のように研ぎ澄ました髪を一斉に伸ばす。
串刺しにされる事態はどうにか免れたが、避けきれず頬に赤い線が走った。
護身をしていなかったら頬の肉を抉り取られていただろう。
休むことなく付喪神の髪は思葉に襲いかかってくる。
玖皎の波動と助言によって辛うじて受け止め、弾いた勢いで後ろに下がった。



