付喪神は目の前に居る獲物に集中しているのか、こちらにまったく気づいていない。
奇襲をかけるのなら今がチャンスだ。
「きゃあっ……!」
付喪神が髪を一斉に伸ばし、その誰かを絡め取る。
その人は宙づり状態になった。
身体にくっと力をこめ、思葉は駆け出した。
玖皎の力のおかげで、付喪神のところまでぐんぐん進める。
「思葉、ひとまずあの髪を斬り落とせ!
そうすれば、やつの怒りの矛先がおれたちに向く!」
「了解!」
とりあえず、捕まっている人にけがをさせないようにしなければ。
思葉は強く地面を蹴って飛び上がった。
ようやく気付いた付喪神がこちらを見上げる。
それと同時に、思葉は太刀を思い切り振り下ろした。
柄を介して、布を裂くような感触が手に走る。
「ギャアッ!」
付喪神が、まるで絞め殺される寸前の鶏のような声を上げた。
着地した思葉は、捕えられていた人を抱えて素早くその場から離れる。
玖皎の力のおかげで難なく動けた。
本体から斬り落とされた髪は水に溶けるように消え、雁字搦めにされていた人が露わになった。
嫌な予感が的中する。



