妖刀奇譚






すると、柄に触れている左手から、何か温かいものが流れ込んできた。


あっという間に全身に回ると、身体の内側から力が沸き上がってくる。


さっきまで感じていた疲れや痛みが、まるで最初から無かったかのように消えている。


そして地面を蹴る力も、路地を走る敏捷さも、格段に増していた。


走りながら思葉はびっくりして、転びかけて止まりそうになったのをどうにかこらえた。



「わわっ……な、なにこれ」


「ああ良かった、成功したみたいだな」


「へっ?」


「今おまえの身体におれの波動を送っているんだよ、ついでに妖力も少しな。


これでさっきよりもずっと速く動けるだろ」



確かに、短距離走並みのペースで走っているのに、身体にはまったく疲れがない。


それどころか、逆に活力がりんりんと湧いてくる不思議な感覚がした。


足を動かせば動かすほど、自分のものとは異なる血脈の流れを全身で感じる。


これが玖皎の持つ力。



「何かまずいことがあれば問答無用でおまえの身体を操るが、正直千年の空白でうまくやれる自信がねえ。


だから、万が一殺されかけたりしても自分で対処するつもりでいてくれ、力は貸してやるから」