妖刀奇譚






「大丈夫か?」


「だ、大丈夫……ちょっと走るの、苦手なだけだから」


「おいおい……」


「少し休んだら、すぐ行くから……あの先の道、曲がればいい?」


「ああ、そっちの方向から波動が来ている」



やはり、付喪神は綾乃の家の近くにいるようだ。


思葉は屈伸をして簡単に脚をほぐす。


目的地までもう少しだ、頑張って走りきらないと。


ここでの時間のロストはかなり痛いしまずい。



「思葉、おれを袋から出せ」



再び走ろうと顔を上げたとき、玖皎が声をかけた。


急に言われて思葉はたたらを踏む。



「えっ?」


「出したらおれの柄に触りながら走れ」


「な、なんで?」


「いいから早く!」



声の勢いに気圧され、思葉は言われたとおり玖皎を鞘袋から出した。


ウエストポーチに鞘を挟む。


本来ならば佩緒(はきお)をほどいて身体に巻き付け、ぶら下げなければならないのだが、今はそんな時間も余裕もない。


ずり落ちないよう左手で柄と鍔を一緒に押さえながら思葉は駆け出した。