進めかけた足を、思葉はもう一度止めた。
どこか離れたところから聞こえる遠吠えが闇に溶けてから、ジト目で玖皎を睨む。
「……ねえ玖皎、何でわざわざフラグを立てるのよ」
「ふらぐを立てる?」
「物語の伏線とかお約束みたいなもんだよ、それが張られたことをフラグが立つって言うの。
しかもその伏線は、大抵よくないことが起こるって意味だから。
例えば、戦場で『おれこの戦争が終わったら結婚するんだ』って言ったらその人に死亡フラグ……つまりこれから死ぬっていう伏線が張られたって具合にね」
「ほう……つまり今、おれはあの付喪神がおまえよりも奇麗な髪を持つ女を見つけるというふらぐを立てたということになるのか」
「ご丁寧にご説明どうも」
ますますフラグが成立した、という感覚しか湧き上がらない。
『13日の金曜日』に抱いた悪い予感の正体はこれなのではとさえ思えてくる。
そして、『思葉よりも奇麗な髪』という玖皎の発言で、友達を連想した。
もちろん、他のクラスメイトからも心配されるくらい奇麗な髪を持つ綾乃のことだ。
今日綾乃は学校以外でどこにも出かける予定がないと話していたが、このフラグのせいで一気に不安が募る。



