「……ねえ、ずっと行き詰ってるけど、これ本当に大丈夫なの?
また付喪神が層をつくってそこに人を閉じ込めたりしてたらどうするのよ?
玖皎が削ってくれたって言ってたけど、さすがに恢復してるんじゃ……」
「そうでないと信じたいが……こればかりはどうもな。
しかも別の層に居るんだったら、見つけ出すのは難解だぞ。
まず層の入り口を探さねばならんからな」
「えっ……」
思葉は足を止めて青ざめた。
もしそんな状態になっていたら、朝までに見つけられるかどうかさえ危うくなる。
すると玖皎が励ます調子で言った。
「まあ、あの付喪神の様子を見る分に、あいつが層に閉じ込めるのはいちばん怨恨の強い人間だけだな」
「それって……つまり、あたし以外の人が引き込まれる心配はないってこと?」
「そうだな、恐らくだがあいつの中でいちばん奇麗な髪だと思っているのがおまえの髪だ。
それがきっかけになって恨みを思い出して人型になったんだからな。
だからおまえがこうして毎晩ふらついていれば、向こうから寄ってくると思っていたんだが……」
「玖皎が傍に居るから警戒してるのね」
「かもしれんな。まぁともかく、他の女があの付喪神に、髪を切る以上の被害を受ける心配はないぞ。
付喪神がおまえの以上に奇麗だと感じる髪を持つ女と遭遇しない限りな」



