「だめだ……まるで分からん。
くそっ、おれも落ちたものだな……他の妖怪どもの気配なら分かるのに」
「えっ、いるの?」
「いるに決まってんだろう、おまえら人間に見えにくくなっているだけの話だ。
ほら、そこにだって……あ、なんでもない」
「ちょっと、変なこと言いかけて切らないでよ。こわっ……気になるでしょ!」
「怖いって言おうとしたのバレバレだぞ」
「い、言ってないわよ」
「ほらほら、ここじゃ付喪神の気配がまったく掴めないから移動してくれ」
思葉はむくれたが、玖皎の言う通りなのでおとなしく従う。
しかしどこへ行けばいいか分からず、何となく玖皎が気になるという北の方へ走った。
ここ一帯は学区なので、団地や住宅街が広がっている。
等間隔に並ぶ街灯と民家の窓から漏れてくる光、それと一緒に微かに聞こえてくる生活音以外、何も聞こえない。
時計を確認すると、時刻はもう11時を回っていた。
週末だから酔っ払ったサラリーマンと鉢合わせするのではないかと警戒したが、閑散とした通りを見る限り大丈夫そうだ。
「一応移動してみたけど……どう?」
「うーむ、変化がないな」