「そうだよ、あたしなんか塾にも通ってないし帰宅部だし、夜に出かけることなんかないわ」
(……でも本当は犯人捕まえるために毎晩外を歩き回っています。
嘘ついてごめんね、実央さん、綾乃さん……)
正直に話すわけにはいかない。
昨日から、隠し事をして相手を安心させることが続いている。
それが少し胸に痛い。
「本当に?絶対だよ、絶対。
髪切り魔が捕まるまでは、夜にふらふら歩き回らないでね」
「分かってる、約束するよ。ね、思葉ちゃん」
「うん」
「思葉は心配しなくても大丈夫だろ、それより霧崎の方が危ないんじゃね?」
來世があくびをかみ殺しながら、思葉の髪に触った。
首の後ろがわさわさとして背筋に鳥肌が立つ。
「ほら、思葉なんかより霧崎の髪の方がよっぽど奇麗だしさ。
その変態だって、学年ダントツの美髪を狙うだろ。
思葉のなんか、長くて黒いだけでぼっさぼさだぜ、枝毛大量発生してるんじゃねえの?」
「なんかってなによ、失礼ね」
否定はしないが、來世に言われると腹が立つ。
髪で遊んでいる手をピシリと叩き、思葉は綾乃に向き合った。
「でも、來世の言う通りだよ。
綾乃さん、本当に気を付けてね、なにかあったら逃げるんだよ」
「思葉ちゃん、辻森にディスられてるの認めないでよ」
実央が苦く笑ったが、またすぐに生真面目な顔つきになって綾乃の手を取った。



