綾乃が不安そうな表情を浮かべて自分の髪を触った。
何だそれ、と來世が顔をしかめている。
無意識のうちに、思葉は肩に掛けている鞄の手提げを握りしめていた。
あの付喪神の仕業に間違いなかった。
「そう。なんかうちの学校でもう被害に遭った人がいるらしいんだ。
塾の帰り道で……背後で何かの気配を感じたら」
「ジャキンって切られちまったのか?」
來世が左手を鋏のようにして言葉を継ぐ。
大きく頷いた実央は、階段を昇りきったところで思葉と綾乃を交互に見た。
「思葉ちゃん、綾乃ちゃん、気を付けてね。
2人とも髪長いんだし、特に綾乃ちゃんなんかすっごく髪奇麗なんだから、夜に歩き回っちゃだめだよ」
実央が怖い顔をしているのは、2人のことを心配してである。
それは分かっているので、思葉と綾乃はもちろん、來世も余計な悪ふざけはしなかった。
場の空気を読み間違えない幼馴染である。
「ありがとう、実央ちゃん。
でも大丈夫だよ、わたし、塾行ってるけどお母さんがお迎えに来てくれるから」
安心させるように微笑んで、綾乃が実央の肩をぽんと叩いた。
同意を求められて思葉は頷き、実央の腕あたりを撫でた。



