「これはあくまでおれの想像だが」
そう断ってから玖皎は推測を話し出した。
「あの付喪神が長い黒髪の女を襲うようになったきっかけは、おまえにあるんじゃないのか?」
「えっ、何で?」
「棟口が妙な夢を見だしたのは、あの櫛を蔵にしまってすぐなんだろう。
櫛が蔵にしまわれたその日にたまたまおまえがここを通って、あの付喪神がおまえの髪を見て恨みを思い出した……そうは考えられんか」
「確かにここは人通りが多くないから、その可能性もあるかもしれないけど……。
でも、長い黒髪の人は他にもたくさん居るでしょ?
それに、黒髪を憎んでいるのなら、棟口さんのお母さんが使っている頃から怪奇現象が起きているはずじゃない?」
玖皎がはあっとため息をついた。
少し苛立たせるそれはわざとか無意識か。
「あのな、付喪神というのは長い年月をかけて妖力を溜めて生まれるんだよ。
それに、つくられてから数十年程度しか経っていない物は、妖力の器としては弱すぎて使えないんだ。
生き物に例えるなら、未完成の肉体を無理に動かして自滅するといったところだな。
あの付喪神は人間の霊力の源に触れていたからあんだけ力をつけていた様だが、その点に関しては例外じゃないと思うぜ。
そうじゃなかったら付喪神とはまた違う妖怪だからな」
少しこんがらがってきたので、思葉は歩きながら整理した。



