まさか昨夜の出来事を正直に話して不安にさせるわけにはいかない。
嘘をつくのは快くないが仕方なかった。
「そうでしたか……それはよかった」
ほっとした表情になる棟口を見て、罪悪感に胸が痛む。
残りが少なくなった思葉の湯呑みにお茶を注いで、棟口が「そういえば」と呟きながら急須を置いた。
「どうしました?」
「あ、いえ……これはわたしの体験した怪奇現象に関係しているのかは分かりませんが」
棟口はいくらかためらった様子を見せてから、遠い記憶を引っ張り起こすように話し始める。
「あの飾り櫛は、母が叔母……母の妹ですね、叔母と一緒に古着屋へ出かけたときに購入したものなんです。
それで買う際に、その櫛の前の持ち主は、結婚を約束していたのに浮気されて捨てられた恋人への恨みを募らせたまま亡くなった女性だと、店の人に言われたんだそうです」
「えっ……」
「どんな神経をしていたんだ、そいつ」
玖皎が後ろで声を発する。
心の中で喋ったことを咎めつつも思葉がそれに賛同したのは言うまでもない。



