急に棟口の語尾に力がなくなる。
思葉は息をのんで話の続きを待った。
「その晩か、次の日の晩だったでしょうか……夢を見るようになったんです」
「夢、ですか?」
「はい。髪の長い、和服姿の女性が出てくる夢でした。
背中を向けていたので顔は分かりません。
別にその夢は毎日見ませんでしたし、その女性の夢を見たせいでわたしの身に悪いことがおきたのではないのですが……」
棟口が口ごもる。
どこかにある柱時計だろうか、ボーンと弦をはじく音が聞こえた。
「蔵に、髪の毛が落ちているようになったんです」
「え?」
「それも自然と抜け落ちたようなものではなくて、鋏で5センチほど切り落とされたようなものばかりです。
一本ではなく、数十本……多いときには指ではつまみきれない量でした。
落ちているのは決まって、女性の夢を見た翌日でした。
いくら掃除して髪を捨てても、しっかり施錠しても、夢を見れば必ず落ちていたんです」
予想もしていなかった怪奇現象に思葉は何も言えなくなった。
見知らぬ人の髪が、女の夢を見た日に蔵に落ちていれば、誰だってぞっとする。
正直なところ、気持ち悪いと思っていた。



