妖刀奇譚






言う前から差し出してきた來世の手を叩く。


バレたくないのかバレたいのか良く分からない。


小銭と整理券を投入口に入れ、二人はバスを降りた。


この辺りは田畑や一昔前の民家が多く、人の姿があまりない。


たまに目に入る通行人の大半がお年寄りだ。


だから訪問販売にはうってつけの場所だと狙われやすい。



近道をしようという來世に続いて畦道を歩く。


水を落とした田んぼでは、ずっしり膨らんだ穂をつけた稲たちが風に揺らいでいる。


松の立つ角を曲がり、やがてクチナシの木が目印になっている富美子の家に到着した。


入口の側には、県外ナンバーのワゴン車が停まっている。


思葉は通り過ぎながら少し覗いてみると、荷台には段ボール箱や木箱などがごっちゃり積んであった。


どう見ても偽物を売りつけ回っている車である。



(……でも、よく見る黒い高級そうな車じゃないや。


ということは、初めて会う人?


まあ、訪問販売に来た9回全部追い返してやったから、まだ来てる方がびっくりよね)



強面の屈強な男だったらどうしよう。


少しだけ不安を抱えて、思葉は玄関へと続く敷石の上を歩いた。