庭を眺めてもあまりおもしろくないので、思葉はぐるりと室内を見回した。
すると右手側、庭と反対に位置する襖が開きっぱなしにしてあり、隣の和室の様子が伺える。
奥の方に仏壇があって、その手前に一枚の写真が飾ってある。
優しげな微笑みを浮かべる高齢の女性だった。
写真の前には位牌と焼香が置かれ、その周囲には花や果物、菓子折が飾られている。
並べきれなくてその脇に積まれているものもあった。
あの女性は、最近亡くなった人なのだろうか。
「母ですよ」
頭上から降ってきた声にハッとして振り返ると、盆を持った棟口が入って来ていた。
運んできた湯呑みをテーブルに置き、視線を仏壇の方にちらりと向ける。
「二月前、心筋梗塞で倒れて……そのまま亡くなったんです。
わたしは東京で暮らしているのですが、こちらで家の整理をしなければならなくてね。
家内は仕事がありますし、子どもたちも学校があるので、わたしだけがこちらで寝泊まりしているんですよ」
「そう、なんですか……」
突然の暗い話にどう言葉を返せばいいか分からず、思葉は湯呑みを手にした。
棟口が疲れきった顔をしている理由がよく分かった。
どんな人であっても、家族を亡くせば心にとてつもない負担がかかる。



