「だ、大丈夫です、ちょっとびっくりしただけで……。
あの、何の連絡も無しに押しかけてすみません。
昨日お預かりした櫛のことで、少しお伺いしたいことがありまして……」
「預かったというより、押し付けられただな」
玖皎がぼそりと呟いたが、棟口の顔色が変わったので無視する。
警戒している表情だ。
思葉は何か言われる前にと言葉を継いだ。
「あっ、でも、返しに来たわけじゃありませんから。
本当に……ただ、お話をお聞きしたくて、昨日書いてくださったメモを見ながら来ただけですので……」
喋りがしどろもどろになる。
棟口はまだ戸惑った表情で思葉を見下ろしていた、怪しまれるのも無理はない。
一呼吸挟み、思葉は単刀直入に言うことにした。
「あの、あの箱にしまってあった物で、何か困ったことでも起きたんですか?
たとえば……怪奇現象みたいなのが」
「えっ……何かあったんですか?」
棟口が青ざめる。
やはり、満刀根屋に預かってもらおうとした意図はここにあるようだ。
彼もまたあの櫛にひどい目に遭わされたのだろうか。



