來世が軽く頭を下げる。
このやり取りも、富美子の家に行くまでの恒例行事のようなものになっていた。
そのつむじを思葉はぐりぐり押してやる。
「分かってるならブラックリストつくってあげるなり何なりやってあげなさいよ。
それに富美子おばあちゃんと一緒に住めばいいじゃん。
一人暮らしだから尚更狙われるんだよ」
「そうした方がいいとはおれも思うけど、そうもいかねえんだよ。
母さんはともかく、父さんはばあちゃんが苦手だから」
「あれ、富美子おばあちゃんって母方なの?」
「ううん、父さんの母さん」
「そうだよね?」
「息子大好きなところが酷いらしくてさ、子離れも全然できなくて、そのせいでばあちゃんの家からなるべく近いところに家建てざるを得なかったんだよ」
「そうだったんだ、初耳」
「あれ、前に話したことなかったっけ?」
「うん」
降車ブザーを押した來世の顔はやや疲れたものになっていた。
愛する息子の一人息子であるから、彼にも富美子の大きな愛情が注がれている様子だ。
一緒に来て欲しいと頼んでくる理由のひとつにこれも含まれているのかもしれない。
「そっか、お疲れ様」
思葉はその背中をぽんと叩いてやった。
「分かってくれるか、思葉」
「うん、でもバス代は奢ってやらないからね」
「くそっ、バレてたか」
「バレバレ」



