「――なら、あたしを護ってよ」
自分のものとは思えない、低く激しい情動を抑えた声だった。
両手で水干の胸元あたりを掴み、思葉は燃え盛る瞳で玖皎を突き上げた。
表情は視界に入らない。
玖皎の黒玉のような双眸だけを見つめた。
激流が喉の奥にぶつかる。
「そんなに自分が悪いと思うんだったら、あたしのことを護ってよ。
あんたの言う罪は、主人を護れなかったことと、妖怪じゃなくて人をたくさん斬ってきたことなんでしょ。
だったら今まで護れなかった人たちの分まであたしを護ってよ。
それでもう二度と人を殺さなければいいじゃない」
思葉は掴んだ水干をぐいと引っ張る。
たじろいだ様子でいたが玖皎はどうにかバランスを保ち転倒せずに済んだ。
近づいた瞳に、気圧されている色が浮かぶ。
「今の玖皎には、この身体があるんだよ。
今までのあんたとは違う、抵抗する力だって護る力だって持ってるんだよ。
現にあたしを護ってくれたでしょ?
だから、今までと同じように考えてちゃダメなの、それじゃダメなの」
かぶりを振ったとき、ちぎれた涙が頬を滑り落ちたのに気付いた。



