玖皎は何も言わず、暗い瞳を思葉からついとそらす。
また彼の口から自己嫌悪の言葉が出てきそうな気がして、思葉は先に声を発した。
「……どうして話してくれたの?」
「はあ?おまえから聞いてきたんだろ、直接的ではなかったが」
「そ、そうだけど、そういうことじゃなくて……。
今まであたしが、今みたいに直球じゃなくて遠まわしに聞いたって、あんたさり気なくかわしてきたじゃん。
なんか、それ以上聞いてくるな、踏み込んでくるなって雰囲気出して」
「あー、そうだったか?」
「そうだったよ」
唇を尖らせて思葉が頷くと、玖皎はまた髪を掻いた。
少し困った眼差しを横に流し、言いにくそうに口をもぞりと動かす。
「……これまで様々な人間の手を渡ってきたが、おれに本当に向き合ってくれたのは姫以外におまえだけだったからだ。
おれの声が聴こえるやつだからというのもあるがな。
でも、聴こえる人間でも向き合おうとしないやつに話すつもりは露ほどない。
……理由はそれだけだ」
まだ足りないのかとでも言わんばかりの口調だった。
玖皎は立ち上がって窓に近づき、思葉はまた両腿に置いた拳に目を落とす。
決して優しくはない言い方だったが、思葉を信じているから打ち明けたということは伝わってきた。
それが胸に温かくじわりと広がり、同時にわずかに痛みが強くなった。
鼻の奥がつんとして、泣きそうになるのをどうにか堪える。



