「戦いの音が収まって一夜明けて、おれは通りかかった村人らしき人間に拾われた。
次はこいつが主になるのかと思ったが、そいつはおれを近くの小さな神社へ持って行って、かなり年老いた神主に渡した。
おれの近くに転がっていた仏の供養をしてほしいとか言いながらな。
その神社が、ついこの間までおれがぼうっと居座っていたあの古ぼけた神社だ」
「そう、だったんだ……」
「まったく、戦でここまで主を失うとは思いもしなかった。
中には戦場ではなく屋敷で、おれ欲しさに家臣に毒を盛られた挙句、息子がそいつのせいで関白だとかいう職の侍に大減封を食らった家もいた。
こんなに人の手を渡り続けた刀も珍しいだろうよ。
敵陣に追い込まれて、主やほかの味方の首を刎ねるようなことをさせられなかっただけまだましか」
疲れたように笑う玖皎の横顔は沈んでいた。
思葉は俯き、パーカーの裾をわし掴む。
『よかった……今度は護れて』
先刻聴いた玖皎の言葉が鼓膜の奥で反響する。
彼の過去を教えられ、そこに含まれた重苦しいものを強く感じた。
辛い、哀しい、苦しい……そんなありきたりな言葉を口にする気は憚られる。
当然、彼が味わってきたことを「分かる」こともできない。
分からない。



