妖刀奇譚






「おれも道臣も冷静さを失っていたし、その山賊は闇に乗じるのが巧みであった。


おれが気づいて道臣の名を呼んだときはもう手遅れだった。


道臣は頭を大きく窪ませ、おれはその手から抜けて廊に落ちた。


……その山賊は道臣の服を探って金目のものがないと分かると、持っていた棍棒を捨てて代わりにおれを拾った。


そうして、おれを持ったまま宴の広間とは反対の方へ歩いて行った」


「抵抗しなかったの?」


「操るだけの妖力がまだ恢復していなかったんだ、前夜に亡者どもと激戦を繰り広げたのがかなり響いたからな。


それに、その力を使えるのは人ならざるものと相対しているときのみ。


晴明の呪いが、かえって仇になっちまったってわけさ」



また玖皎が吐息だけで笑う。


思葉は知らぬ間に唇を噛んでいた。


共に妖怪を討伐してきた陰陽師を殺した相手の手に捕えられ、その者を倒すどころか抵抗することすらできない。


されるがままだった玖皎の悔しさや憤りは凄まじいものだっただろう。



「おれはその山賊に盗まれたまま、何もできずにやつの手中に収まっていた。


宴の席から聞こえてくる音は聞くに堪えんものだったな……そいつが楽しそうに笑っているのを見たときは殺意が芽生えた。


まあ、何もできなかったのだが」