「盛大ではないがそれなりに賑やかに開かれた宴の最中、寺を山賊が襲ってきた」
「えっ……」
山賊。
さっきも玖皎の口から聞いたのに、こちらの方がずっと嫌なものを孕んでいた。
血腥い獅子のような恐ろしさを感じる。
玖皎は窓の方へ顔を向け、淡々とした調子で言葉を続けていく。
「おれはそのとき道臣の部屋にいたので見ていたわけではなかったが、宴の騒ぎの質が変わったのには気付けた。
眠っていた道臣を起こして、急いで宴の広間へ行くように言った。
道臣はあまり寝起きのいい方ではなかったが、事態を把握すると寝間着姿のままおれを手に取って部屋を出た。
途中で持っている刀がおれだと気付いて、自分の打刀を取りに戻った。
晴明から、人を斬るのにおれを使ってはいけないという注意をこの緊急事態でも守ろうとしてくれたんだ。
それが悪かったんだろうな……道臣は、背後から迫ってきた山賊のひとりに殴り殺された」
思葉は顔をゆがめていた。
つい閉じてしまった眼裏に、頭から血を流して倒れる男が観えた気がする。
淡々とした調子を崩さず玖皎が話を続けた。
当時の感情を思い出さないようにしているのか、思い出してしまってもそれに呑み込まれないようにしているのか。



