姫たちよりも、そのお付きの命婦役や女房役の方に心が惹かれた。
それでも現代に比べれば、心のままに振る舞っているようには到底見えなかった。
(平安時代のお姫さまって、ちょっと可哀想)
少し口を開けて笑っただけで命婦に叱られたり、軽く小走りしただけで侍女たちに嘆かれたりする姫たちを見て、思葉はそう感じていた。
玖皎も似たようなことを思ったのだろうか。
琴も、そういう貴族の暮らしを嫌だと感じたのだろうか。
「だが、姫やおれがどう思おうと、着裳の日は確実に近づいてきた。
おれは姫の話を聞くことしかできなかったからな、聞いたからといって、どうしてやることもできなかった。
……それに、その三年前に晴明が死んだのをきっかけに都の妖怪どもが騒がしく動き始めてな。
道臣のほかにもう二人遣わされた陰陽師と共に毎晩山を見張り歩いていたせいで、昼間に聞かされる姫の声はいつも話半分だった。
仮に真摯になって聞いたからといって、何かが変わるわけでもなかったが……」
ジジ、と虫の羽音に似た音がして蛍光灯が一瞬だけ暗くなる。
思葉は苦い唾を呑み下し、背筋を伸ばした。
玖皎の横顔がわずかに強張っている。
どうやら、話の核心に触れ始めたらしい。



