平安時代の、それも貴族たちの生活は知識はあるけれど、テレビドラマなどで脚色されていない本当の姿は分からない。
ただ、しがらみが多く窮屈そうであるとは感じていた。
周囲の侍女たちとは異なり、山寺を囲う豊かな自然の中で遊び、心のままに生きることを好む少女にとっては苦行でしかなかったのだろう。
その当時に生まれなくてよかったと思葉はこっそり思った。
「おれも貴族の、特に女たちの生き方は好きじゃない。
あのような生活を送り続けていれば、人らしい性分がどんどん欠落していく。
まるで飼い殺しにされている獣たち同然だ。
心のままに表情や身体を動かしてこそ、姫のかわいらしさや魅力が出ていたというのに……」
そこまで言って、自分が口にした言葉に驚いた様子で玖皎は唇を噛んだ。
直っていた頬の赤みが瞬く間に戻り、噛み潰した苦虫をしっかり味わったような顔になる。
思葉に睨みに近い視線を一瞬だけ投げると、すぐに首ごとそむけた。
その様子を見るに、今玖皎が発した言葉は彼の本心であることが悟られる。
(……そういう反応をするから、余計にからかわれるんだよ)
白髪を見ながら思葉は胸の中でつぶやいた。
いたずら心は芽生えたが、あまりに無粋なことなのでやめておく。



