妖刀奇譚






「着裳って、元服みたいなものだよね?


女の人が大人になって、裳を着たりお歯黒をつけたり、眉毛を剃って厚化粧したりする」


「おや、詳しいじゃないか」


「古文によく出てくる言葉だからね、知ってるわよ」



思葉はとんとん胸を軽く叩いて張ってみせる。


そうかと呟いた玖皎が、ふ、と目を細めた。


黒い瞳に一瞬、優しいけれど悲しげな光が走って消える。


その目つきに思葉はわずかに肩を震わせたが、玖皎は気づいていない様子で片腕を頭へやった。



「姫は着裳の儀式をひどく嫌がっていたな。


そういう儀礼があることを知り、それが決して避けられないものだと分かり、その日どりが近づいてくるたびに、侍女たちに聞かれないようにしておれにぼやいていた。


大人になってしまったら、今のように気ままに過ごすことはできない。


今以上に多く複雑な、面倒なしきたりに一生囲まれ、外にすら出ることができなくなってしまうと。


大人にはなりたくない、今のままずっと過ごしていたいと言っていた。


眉を抜くことに対しても歯を黒く塗ることに対しても、かなり嫌そうにしていた」