少しだけ頬を赤らめて、玖皎が再びそっぽを向く。
その素直じゃないところが妙に人間らしくて、思葉はにやけそうになった口角をどうにかこらえた。
口元に軽く握った拳を当てる。
「でも良かったね、急に安倍晴明のところから飛ばされたご主人さまがそういう人で」
「……それは認める。
おれが遣える人間が姫ではなくて、その周囲にいた侍女どものような人間だったら早急に見限っていたかもしれん」
「それはどうなの?」
極端すぎる玖皎の発言に、冗談なのか本気なのか分からず思葉は苦笑する。
玖皎がごまかすように空咳を数回した。
「とにかく、姫はそういう性分の人間だった。
笑い、泣き、怒り、楽しむ……山寺に居た者の中ではもっとも表情が豊かで、姫の周囲はいつも明るかったな。
そしてそういう無垢な弱い魂は妖怪に狙われやすいのだ。
だからおれは毎晩、山寺に忍び寄ってくる異形たちを、道臣と共に闇へ葬った。
道臣も最初はかなり心もとない男だったが、姫の着裳の儀が近づいてきたころには見違えるほど成長していた。
それでも晴明の足元には少しも及ばなかったがな」



